名古屋在住の即興ギタリスト、臼井康浩さんと久しぶりに喋ったら、けっこう盛り上がったので転載します。東南アジアの音楽や文化について喋っています。


臼井康浩(以下、や):
「淳一さん
急なお知らせですみません。明後日10/28なんですが、
Elliott Sharpがとても素晴らしいと推薦しているイタリアのギタリストが急遽来日することになり、ソロ&セッションを行うことになりました。アンビエント的な繊細で美くしい世界観のある方です。
久々にお会いできたら嬉しいです。」

臼井淳一(以下、う):
「ご無沙汰しております。よさそうなんですが、既にベトナムに引っ越して一年経ちます(^^」

や:
「ベトナムでしたか〜〜。わぉすごいですね。
行ってみたいです。
益々のご活躍を!!!」

う:
「こっちは、へんなギターありますよw」

や:
「ありそうですねーー。興味深いです。滞在ビザって難しくないですか?」

う:

カイ・フユン(ベトナム) by Khai Huynh(Vietnam)

カイ・フユン(ベトナム)by Khai Huynh(Vietnam)

U・ティン(ミャンマー)by U Tin(Myanmar)

や:
「独特ですね〜。面白い。」

う:
「入国は、日本のパスポートならば、ビザなしで入れます。15日かな?
弦楽器、ベトナムは安いです。ギターが3000円から変えます
※買えます
これも3000円くらい

や:
「めっちゃ安い!!!」

う:
「いいのは、3万~6万しますけどね。

や:
「いい部屋ですね。」

う:
「そっちの話題か。その部屋は引っ越しました
今はこっちの部屋です。500ドル・月

や:
「部屋がグレードアップしてますね。
マウスヴァイオリンって言うんですね。似たようなのは見たことあるんですが、ユニークです。」

う:
「クニ(K’ny)という楽器です。ベトナム中部からカンボジア東北にかけて存在します」

や:
「なるほど、多分カンボジアの方の動画を見たように思います。
日本でやっている人いないですね。めっちゃ面白い楽器です。」

う:
「簡単に作れますよ。
すぐにパクられないか心配」

や:
「簡単なんですね。演奏するの難しそうです。」

う:
「吐きそうになります。」

や:
「確かに」

う:
「口にプラスチックの板を咥えます。前は牛かなんかの角でした。」

や:
「なるほど、それで共鳴しているんですね。
プラスチックかぁ〜。微妙ですね。」

う:
「あとこれ、ボディーが、いいボディーだと(ギターやバイオリンのように共鳴が充実していると)、口からの音が聞こえなくなります。
なので、ダメなボディーである必要があります。」

ティ・ロ・チャム(ベトナム)by Tih Ro Cham(Vietnam)

や:
「なるほど!!!ちょっと笑える楽器ですね。」

う:
「エレクトロ化できないんじゃないかなー?口の振動を拾うのは難しいような。。」

や:
「それは難しいですね。骨振動を拾っても何か違うようになると思います。」

う:
「この辺り(ベトナム中部高原のジャライ族は)は、弦楽器でもゴングでも、同じ曲を共有してます。


ベトナム中部のジャライ族の葬式でのゴング演奏」

や:
「ほぉ。それもすごいですね。楽器の役割分担の概念が違いそうです。」

う:
「もともと、弦楽器や竹の楽器でメロディーを演奏してた => 中国商人がゴングを持ってきた => ゴングでも演奏するようになった、というのは、ボルネオ島・ベトナム先住民で共通しますね。」

う:
「>楽器の役割分担
これは場所によって変わりますね。
アジアのマウスオルガン(日本の笙の原型にあたる同種の楽器)をずっと調べていますが、儀式で弾く・弾かないが、地域によってはっきり分かれます
集団で弾く・弾かない、踊りと一緒にひく・弾かない、他の楽器と弾く・弾かない
とレヴィ・ストロースの神話研究のようですw」


中国・雲南・リス族のマウスオルガン, Hulusheng.


中国・雲南・リス族のマウスオルガン, Hulusheng.


インドネシア・ボルネオ島西部のマウスオルガン、Kadedek.


ベトナム中部・ラグライ族のマウスオルガン, Sarakel.

や:
「今でも民族楽器が現役でバリバリ使われている感じで素晴らしいです。
それぞれの地域性があるのもいいですね。」

う:
「東南アジアでは、民族音楽がバリバリ現役の、生きた楽器ですね」

や:
「本当に素晴らしいです。理想的です。」

う:
「地域性は本人たちも意図的に作るんですね。
他の民族・村・家族には負けねぇ、というわけです。バリでは村ごとに、ガムランのチューニングもリズムも音階も曲も違うって聞きました」

や:
「そんなに違うんですか。やはり理想的です。」

う:
「濃い話になりますが、同じ音楽やダンス、衣装を持っていること、それは『同じグループ』あるいは『征服された』関係になります
インドネシアって楽器が多いんです。
最初は音楽が好きで、楽器を作るのが好きなひとたと解釈していたけど、そういう背景もあるようです」

や:
「そういう関係性と背景があるんですね。全く知りませんでした。アイデンティティーと直結している感じなんですね。」s

う:
「そうそう。
でもそれって、現代アートと同じですよ。
『僕はこんなのあるもん・できるもん』ってわけですね」

や:
「そう考えると同じかもしれないですね。」

う:
「まるっきり(断言)。
日本やニューヨークのアンダーグラウンドのミュージシャンが、個性的なエフェクターをそろえてくるのと根は同じだと思っています(マーク・リボー、アート・リンゼイ、灰野敬二、内橋和久)。」

や:
「確かに、根源的な芸術表現の共通点なのかもしれません。」

う:
「いい方向への、勝ち負け意識ですよね。
変なひがみじゃなくて。」

や:
「そうですね。いい意味で切磋琢磨できて良い関係性だと思います。大変なところもあると思いますが。」

う:
「ベトナムはともかく、インドネシアは、踊りや音楽には意識高いですよ。
踊りの場合、練習の時にダンサーが間違えると、ものすごく叱られています。
あと、口伝なんですよね。紙を使わずに最初から最後まで通しでやる。
口伝のいいところは、なんちゃってなヤツがいないんです。
『なんとなく音を出すヤツ』『なんとなく形を合わせるヤツ』がいると、やっぱり質が下がるんです。
口伝は、時間がかかるし、効率が悪いけど、最終的には、モチベーションと能力の高い人が残るメリットがありますね。」


ジャワ島最東のバニュワンギのダンス

や:
「口伝の凄さはインド音楽でも感じますが、やはり継承していくには欠かせないやり方なんだと思います。
広く広めるには楽譜は便利ですが、大事なエッセンスが抜けてしまいますよね。
誤解したまま、いろんな文化に変形して反映されるというメリットもありますが。」

う:
「うむ。

>いろんな文化に変形して反映されるというメリットもありますが。
日本の雅楽が、中国の俗楽から発展したエピソードがありますね。
東南アジアはもっとあるだろうなー。」

や:
「無限に広がっている感じが、多次元宇宙のようになっていてすごく可能性があるように思います。
東南アジアを探究すると日本に帰ってこれないですね。楽しそうです。」

う:
「それは、誤解とか楽譜というより、受け手のイマジネーションだと思います。
東南アジアのマウスオルガン(日本の笙の原型で、笙よりずっと前からあった)は、中国、ロシアと移動し、最後に、イギリスの楽器職人にインスピレーションを与え、それがハーモニカやアコーディオン、コンサーティーナになりました。」

や:
「なるほど、そういう流れなんですね。いろんな繋がりで、様々な形で影響うけあっているのを改めて痛感してます。」

う:
「>東南アジアを探究すると
多くの楽器や香辛料、衣服がここからヨーロッパへ行ったのですから、もっと知られてほしいですけど、まだ低評価ですよね。
昔の日本との関係も、もっと見つかるはずです。アンコール(カンボジア)やベトナムの仏教の彫刻は、日本に(特に奈良の)あたりの仏像に似ているとかね。
まだ低評価という印象は否めないですよね。日本との関係性もまだまだ、探究していくとあるんでしょうね。」

ベトナム南部メコン地帯の仏教絵画


ベトナム南部メコン地帯の仏像

や:
「めっちゃ勉強になりました!!!!ありがとうございます。ベトナム行きたくなりました。一度嫁と行こうという話にはなったんですが、実現していないんです。」

う:
「ぜひいらしてください。今のところ一人ですが、少しずつ増えていけばいいなと思っています。」

や:
「はい!!!是非!!!」

2018年10月26日 facebook messangerにて


関連リンク:【ライブ映像】2014/9/22 臼井康浩 臼井淳一デュオ演奏